インドでは、半導体産業の育成に向けた政府支援や製造拠点への投資が本格化し、これまでの「計画・承認」の段階から、実際の生産設備の立ち上げやサプライチェーン構築へと移行しつつあります。
特に2026年6月から7月にかけては、新たな半導体支援政策「Semicon 2.0」の承認や、グジャラート州をはじめとする各地域での製造拠点整備、グローバル企業による研究開発投資など、今後のインド半導体市場を左右する重要な動きが相次ぎました。
本レポートでは、インド半導体市場の最新動向を整理するとともに、半導体製造装置、材料、精密機器、クリーンルーム、自動化設備などを手掛ける日本企業にとっての市場機会について解説します。
インド半導体市場が「計画」から「実行」のフェーズへ
2026年6月から7月にかけて、インドの半導体産業は大きな転換期を迎えています。
これまで政府による工場建設計画や投資承認が中心だったインドの半導体政策は、実際の製造拠点の稼働準備、対象地域の拡大、長期的な政策支援体制の構築へと進み始めています。
今回の市場動向を象徴する主なポイントとして、次の3つが挙げられます。
- Semicon 2.0の予算規模:約152億米ドル(1兆2,750億ルピー)
- 承認済みの半導体工場・OSAT関連プロジェクト:12件
- SEMICON India 2026:2026年9月開催予定
製造クラスターの形成が進むとともに、半導体産業の川上に位置する設備、材料、化学品などへの投資も拡大しています。
海外企業にとっても、単なる市場調査の段階から、設備調達、サプライヤー選定、合弁事業などを具体的に検討する段階へと環境が変化しています。
インド政府が「Semicon 2.0」を承認
2026年7月15日、インド政府は新たな半導体産業支援政策「Semicon 2.0」を承認しました。
従来のIndia Semiconductor Mission(ISM 1.0)を基盤として、より長期的にインド国内の半導体エコシステムを構築することを目的としています。
Semicon 2.0では、主に4つの分野が重点領域として位置付けられています。
半導体製造の川上サプライチェーン・設備
半導体製造装置、産業用ガス、高純度化学品などに対する新たな支援策が導入されています。
インド国内で半導体工場が増えるほど、製造装置だけでなく、それを支える部品、材料、インフラなどへの需要も拡大します。
先端パッケージング
ATMP(Assembly, Testing, Marking and Packaging)やOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)など、半導体の後工程を担う先端技術の国内導入も重点分野です。
半導体製造を前工程だけで完結させるのではなく、パッケージングやテストを含めた総合的なサプライチェーンの構築が進められています。
材料・製造機械
半導体グレードの製造設備や基板などを供給する企業への支援も強化されます。
これは、半導体製造装置や精密機器に強みを持つ日本企業にとって重要な市場機会となる可能性があります。
半導体設計・研究開発
従来型の28nm〜110nmクラスの半導体だけでなく、より先端的なプロセスやカスタムシリコンの設計・研究開発にも重点が置かれています。
インド政府は、製造拠点の誘致だけでなく、設計から製造、パッケージングまでを含めた半導体産業全体の育成を目指しています。
半導体製造拠点の整備と地域分散が進む
インド国内では、実際の半導体関連施設の整備も進んでいます。
グジャラート州サナンドの半導体拠点が拡大
2026年7月には、グジャラート州サナンドにCG SemiのOSAT施設が開設されました。
同プロジェクトには、日本のルネサス エレクトロニクスとタイのStars Microelectronicsがパートナーとして参画しています。
サナンドは、インドの半導体産業を代表する製造クラスターの一つとして存在感を高めています。
インド各地域へ半導体産業が拡大
半導体関連投資はグジャラート州だけに集中しているわけではありません。
新たなプロジェクトが承認され、以下のような地域でも産業クラスターの形成が進んでいます。
- オディシャ州
- ウッタル・プラデーシュ州(Jewar・NCR周辺)
- カルナータカ州
- 南インド各地域
オディシャ州では異種集積や3Dパッケージングなどの分野も注目されており、地域ごとに異なる半導体エコシステムが形成されつつあります。
こうした地域分散が進むことで、製造装置や材料を供給する企業にとっても、複数地域で新規サプライヤーとして参入できる可能性が生まれています。
グローバル半導体企業によるインド投資も拡大
製造分野だけでなく、研究開発や半導体設計分野でも海外企業によるインド投資が続いています。
2026年7月下旬には、Marvell Technologyが今後3年間で2億5,000万米ドルをインドへ追加投資する方針を発表しました。
同社は、設計・エンジニアリング人材を拡充し、AI向け半導体や高速アナログIPなどの研究開発を強化する計画です。
こうした動きは、インドが単なる半導体製造拠点ではなく、グローバルな半導体設計・研究開発拠点としても存在感を高めていることを示しています。
インドで進む主要半導体プロジェクト
現在、インドでは複数の大型半導体プロジェクトが進められています。
CG Power・Renesas
グジャラート州サナンドでOSAT・ATMP事業を展開しており、日本のルネサス エレクトロニクスがパートナーとして参画しています。
日本企業がインド半導体市場に参入する具体的な事例の一つとして注目されます。
Micron Technology
同じくサナンドでATMP施設を展開しています。
量産に向けた自動化設備などの調達が進むことで、関連設備メーカーやサプライヤーにも事業機会が生まれる可能性があります。
Tata Electronics
グジャラート州ドレラやアッサム州で、半導体ファブやOSAT関連プロジェクトを進めています。
クリーンルーム設備や精密製造装置などを含め、関連するサプライチェーンへの需要が見込まれます。
Semicon 2.0による新規プロジェクト
オディシャ州、ウッタル・プラデーシュ州、カルナータカ州などでは、化合物半導体や研究開発を含む新規プロジェクトが期待されています。
これらの新設拠点では、化学品、ガス、製造設備などを供給する企業にとって、新規サプライヤーとして参入できる余地があります。
日本企業にとってのインド半導体市場の事業機会
インドが半導体政策の「実行フェーズ」に入る中、日本企業にとっても複数の事業機会が生まれています。
半導体設備・部品の現地供給需要
Semicon 2.0では、インド国内におけるサプライチェーン構築が重点施策となっています。
特に、次のような製品・技術を持つ日本企業には参入機会が期待されます。
- 半導体製造用ガス・化学品
- 超純水システム
- 光学部品
- 精密製造装置
- ダイシング装置
- ワイヤーボンディング関連設備
- リソグラフィ周辺装置
- 半導体製造用精密部品
新規工場では既存の取引関係がまだ固定されていないケースもあり、新たなベンダーとして参入できる可能性があります。
地域別の半導体クラスターを意識した展開
インドでは、グジャラート州、カルナータカ州、タミル・ナドゥ州、ウッタル・プラデーシュ州などが主要な製造拠点として存在感を高めています。
半導体そのものだけでなく、工場の稼働を支える周辺インフラにも需要があります。
例えば、次のような分野です。
- クリーンルーム設計・施工
- ファクトリーオートメーション
- 半導体工場向けインフラ
- 精密機器用設備
- 重量設備・サーバー向け耐震システム
日本企業が持つ精密性、品質管理、高信頼性などの強みを生かせる分野が広がっています。
合弁事業・技術提携の可能性
インド企業は、半導体産業を急速に拡大する一方で、高度なパッケージングや半導体設計などの技術ノウハウを海外企業から取り入れる必要があります。
日本とインドの間では、半導体サプライチェーンに関する協力体制も進められています。
そのため、日本企業にとっては製品を輸出するだけでなく、
- インド企業との合弁会社設立
- 技術ライセンス
- 共同研究開発
- エンジニアリングパートナーシップ
- 現地生産・組立
などの形でインド市場へ参入する選択肢も考えられます。
SEMICON India 2026にも注目
今後の重要な業界イベントとして「SEMICON India 2026」が予定されています。
本資料によると、2026年9月17日から19日まで、ニューデリーのYashobhoomi(IICC)で開催予定です。
テーマは「Transform Tomorrow: Silicon to Systems」で、500社を超える企業の出展や、各国・各州によるパビリオンの設置が予定されています。
日本企業にとっては、
- インド企業との合弁事業候補の探索
- 各州の産業振興機関との面談
- 半導体関連メーカーとの商談
- Semicon 2.0に関連する市場情報の収集
- 現地サプライチェーンへの参入可能性の調査
などを行う機会となります。
インド半導体市場への参入や事業拡大を検討する企業にとって、今後の市場環境を把握する重要な機会の一つといえます。
インド半導体市場への参入を検討する日本企業へ
インドの半導体産業は、政府による投資支援を中心とした初期段階から、実際の工場稼働、設備調達、サプライチェーン形成へと移行しています。
特に今後は、半導体メーカーだけでなく、製造装置、材料、精密部品、産業ガス、化学品、クリーンルーム、自動化設備など、半導体工場を支える幅広い産業に事業機会が広がることが予想されます。
日本企業にとって重要なのは、インド全体を一つの市場として捉えるのではなく、各地域のプロジェクトや製造クラスター、主要企業、現地パートナー候補などを把握し、自社の技術や製品がどこで求められているかを具体的に見極めることです。
本レポートについて
本レポートは、2026年6月から7月にかけてのインド半導体市場の主要動向をまとめたエグゼクティブ向け市場情報です。
インドの半導体政策、製造拠点の整備、海外企業による投資、主要プロジェクト、日本企業にとっての事業機会などをMRCの視点から整理しています。
本資料はインドの半導体産業に関するすべての動向を網羅するものではありません。具体的な市場参入や投資を検討する際には、対象製品、企業、地域、顧客層に応じた追加調査が必要です。
インド市場への参入・事業拡大をご検討の企業様へ
Market Research Corporationでは、日本企業のインド市場参入および事業拡大を支援しています。
- インド市場調査
- 市場参入戦略の策定
- 販売代理店・事業パートナー候補の調査
- 現地サプライヤー・見込み顧客の調査
- エグゼクティブミーティングの設定
- PoC・事業検証支援
インド半導体市場への参入や現地パートナーの探索、事業可能性の調査をご検討の企業様は、お気軽にお問い合わせください。
