在インド日本国大使館が公表した最新調査によると、2025年10月時点でインドに進出する日系企業は1,463社、日系企業の拠点数は6,464カ所となりました。前回調査の2024年10月時点では1,434社・5,205拠点だったため、企業数の増加に加えて、すでに進出している企業が工場、支店、営業所などの事業基盤を広げている状況がうかがえます。
ただし、「6,464カ所」は進出企業の社数ではありません。本社、工場、支店、営業所などをそれぞれ数えた拠点数です。市場参入を検討する際には、インド全体の成長性だけでなく、どの州・都市に顧客、産業集積、人材、サプライヤーが存在するのかを具体的に確認する必要があります。
本記事では、最新調査の要点と州別の分布を整理し、日系企業の拠点増加がこれからインド進出を検討する企業にとって何を意味するのかを解説します。
インドの日系企業は1,463社、拠点数は6,464カ所に
企業数と拠点数は異なる指標
在インド日本国大使館、在印各総領事館、JETROなどが取りまとめた調査では、2025年10月時点の日系企業数は1,463社、日系企業拠点数は6,464カ所とされています。
企業数は、インドで事業を行う日系企業を法人単位などで数えたものです。一方、拠点数には本社だけでなく、製造工場、支店、営業所、研究開発拠点などが含まれます。一つの企業が複数の州に工場や営業拠点を持つ場合、企業数は1社でも拠点数は複数として計上されます。
したがって、6,464カ所という数字は「6,464社が進出している」という意味ではありません。インド市場に参入する日本企業が増えていることに加え、既存の進出企業が販売、生産、開発、調達、サービスなどの機能を複数地域へ広げている動きを示す指標として見ることが重要です。
参考:在インド日本国大使館「インド進出日系企業調査(2025年10月時点)」
前回調査から企業数は29社、拠点数は1,259カ所増加
2024年10月時点の調査では、日系企業数は1,434社、拠点数は5,205カ所でした。今回の調査では企業数が29社増加した一方、拠点数は1,259カ所増加しています。
単純比較では、企業数の増加率が約2.0%であるのに対し、拠点数の増加率は約24.2%です。集計内容や調査方法に留意する必要はありますが、新規参入だけでなく、すでにインドで事業を行う企業による拠点拡張が進んだことが読み取れます。
この変化は、日本企業がインドを単なる輸出先としてではなく、複数の事業機能を配置する市場として捉え始めていることを示します。販売拠点から製造拠点へ、製造から研究開発やアフターサービスへと、事業の段階に応じて現地機能を増やしている企業もあると考えられます。
日系企業の拠点が多い5つの州
マハーラーシュトラ州が833拠点で最多
州別では、マハーラーシュトラ州が833拠点で最も多く、全体の12.9%を占めています。同州には商業・金融の中心地ムンバイや製造業が集積するプネがあり、幅広い業種の企業が事業基盤を構築しています。
続いて、ハリヤナ州が648拠点(10.0%)、タミル・ナド州が594拠点(9.2%)、カルナータカ州が572拠点(8.9%)、グジャラート州が378拠点(5.9%)となっています。上位5州の合計は3,025拠点で、全国の約46.8%を占めます。
- マハーラーシュトラ州:833拠点(12.9%)
- ハリヤナ州:648拠点(10.0%)
- タミル・ナド州:594拠点(9.2%)
- カルナータカ州:572拠点(8.9%)
- グジャラート州:378拠点(5.9%)
自動車・部品、産業機械、IT、金融、物流、化学など、州ごとに形成されている産業集積は異なります。拠点数が多い州には、顧客やサプライヤーを見つけやすい、経験者を採用しやすい、専門家や支援機関を利用しやすいといった利点があります。
拠点数の多さだけで進出先を決めない
日系企業の拠点が多い州は有力な候補ですが、拠点数の順位だけで立地を決めるべきではありません。営業拠点、工場、調達拠点、研究開発拠点では、必要な条件が大きく異なるためです。
たとえば、法人顧客への営業を目的とする場合は、対象企業の本社や購買部門へのアクセスが重要です。製造拠点であれば、用地や賃料だけでなく、サプライヤー、港湾・道路、電力・水、技術人材、許認可、州政府の産業政策などを確認する必要があります。
IT・研究開発拠点では、必要な職種の採用可能性、人件費、離職率、大学や研究機関との連携も判断材料になります。州内でも都市中心部と工業団地では条件が異なるため、州単位の統計を見た後に、都市、工業団地、顧客までの移動時間へと調査を細分化することが大切です。
約6,500拠点への増加が示すインド市場の変化
日系企業のインド事業が「参入」から「拡張」へ
企業数よりも拠点数が大きく増えたことは、インド事業が新規参入の検討だけでなく、既存事業を深める段階へ進んでいることを示唆します。一つの営業所から複数都市へ販売網を広げる、輸入販売から現地生産へ移る、修理・保守拠点を増やすなど、必要な機能は事業の成長に合わせて変化します。
インドは国土が広く、州や都市によって産業構造、所得水準、流通、言語、商習慣が異なります。一つの拠点ですべての顧客をカバーするよりも、対象市場に近い場所へ段階的に拠点を置くほうが、営業やサービスの効率を高められる場合があります。
一方で、拠点を増やせば、管理コスト、人材採用、品質統一、情報共有、内部統制といった課題も大きくなります。進出時から全国展開を前提にするのではなく、最初の拠点で需要と運営方法を検証し、売上や顧客対応の実績に応じて拡張することが現実的です。
顧客・代理店・人材をめぐる競争も強まる
日系企業の拠点増加は、インド市場への関心と事業機会の広がりを示す一方、競争の存在も意味します。同じ業界の顧客や有力な販売代理店、経験豊富な現地人材に対し、日本企業同士やグローバル企業、インド企業が接触しています。
「日本製だから選ばれる」「現地代理店に任せれば販売できる」と考えるだけでは、既存企業との差別化は難しくなります。顧客が現在使用している製品、価格、調達方法、評価基準、不満を調べ、自社が提供できる価値を具体化する必要があります。
代理店や提携先についても、知名度や会社規模だけで判断せず、対象業界の顧客基盤、担当者数、販売後の技術支援、競合製品の取り扱い、報告体制を確認します。販売実績が積み上がった後に直接展開やJVへ進む考え方は、以下の当社コラムでも解説しています。
これからインド進出を検討する企業が確認すべきこと
拠点の役割を先に決める
進出地域を比較する前に、最初の拠点で何を行うのかを明確にします。市場調査、営業、在庫保有、技術支援、調達、組立、生産、研究開発など、目的によって適切な地域と必要な投資が変わります。
目的が曖昧なまま有名都市や日系企業の多い工業団地を選ぶと、顧客への移動に時間がかかる、必要な人材を採用できない、物流費が想定より高いといった問題が生じます。候補地域を同じ条件で比較できるよう、顧客アクセス、人材、サプライチェーン、インフラ、規制、コスト、将来の拡張性を整理します。
また、最初から現地法人や工場が必要とは限りません。販売代理店との提携、現地調査、テストマーケティングから始め、需要を確認した後に拠点を設立する方法もあります。市場調査を省略するリスクについては、以下の記事でも解説しています。
統計を自社の顧客・製品単位へ落とし込む
日系企業が6,464拠点あるという事実は、インドの重要性を示す材料ですが、自社製品の需要を直接証明するものではありません。必要なのは、対象業界、地域、顧客規模、用途、価格帯まで分解し、実際に購入可能な顧客がいるかを確認することです。
デスクリサーチで候補州や業界を絞り込んだ後、顧客候補、販売代理店、業界専門家への聞き取りや現地視察を行います。競合製品の価格、販売条件、保守体制、顧客の不満を確認し、自社製品の強みが現地で評価されるかを検証します。
統計上の成長や他社の拠点増加を、自社の事業可能性と混同しないことが重要です。進出判断に必要な情報を明確にし、小さな検証から投資を広げることで、立地選定と市場参入のリスクを抑えられます。
海外進出の実行段階では、現地ニーズに合わせたローカライズ、販売チャネル、現地パートナー候補を一体で検討します。パートナー選定の基準と検証手順を事前に決めておくことが、継続的なビジネス展開とリスク管理につながります。
まとめ|拠点増加を自社の参入戦略にどう生かすか
地域別の市場理解が事業展開の出発点
2025年10月時点で、インドの日系企業は1,463社、拠点数は6,464カ所に達しました。特にマハーラーシュトラ州、ハリヤナ州、タミル・ナド州、カルナータカ州、グジャラート州に多くの拠点が集まっています。
この数字は、日本企業にとってインドが重要な事業市場となり、既存企業が複数地域へ機能を広げていることを示します。同時に、顧客、代理店、人材をめぐる競争が強まり、進出前の市場調査と差別化がこれまで以上に重要になっていることも意味します。
マーケット・リサーチ社では、インド市場への進出や事業拡大を検討する企業様に対し、地域・業界別の市場調査、顧客ニーズの確認、競合分析、販売・提携先候補の探索、参入戦略の策定を支援しています。自社に適した地域や参入方法を整理したい段階からご相談いただけます。




