インド、半導体産業のグローバル拠点を目指す

インドは、世界の半導体産業における主要プレイヤーとしての地位を確立しようとしています。同国の国内半導体市場は、年平均成長率17%で拡大し、2028年までに約800億米ドルに達すると予測されています。この急成長に伴い、同分野への外国直接投資(FDI)が急増しています。半導体関連のグリーンフィールドFDIプロジェクトは、20172019年から20212023年の間に27倍もの増加を記録し、20件から47件へと拡大しました。インドは世界の半導体FDIランキングで10位から4位へと躍進し、その投資先としての魅力を強くアピールしています。

 

外資系企業との連携とインフラ開発

インドの可能性を活用するため、いくつかの注目すべき外国投資プロジェクトが発表されています:

 

タタ・エレクトロニクス は、台湾の PSM) と提携し、インドのグジャラート州に半導体製造(ファブ)施設を設立します。これはインド国内の半導体製造能力の重要な節目となります。

タタ・エレクトロニクスは、日本の 東京エレクトロン とも連携し、半導体製造装置の生産に取り組みます。

インドの CG Power and Industrial Solutions は、日本の ルネサスエレクトロニクス と合弁事業を立ち上げ、インドの半導体エコシステムを強化します。

タイの Stars Microelectronics は、アウトソーシング半導体組立・試験(OSAT)施設を建設中で、インドの製造およびパッケージング能力をさらに強化します。

 

インドの人材プール:戦略的優位性

外国企業がインド半導体市場に注目する大きな理由の一つが、同国の膨大な人材プールです。インドのエンジニアは、世界の半導体設計やファブレス分野で働く人材の20%以上を占めています。さらに、インドでは毎年多数の工学系卒業生を輩出しており、労働コストが比較的安価であることから、コスト最適化と専門知識の活用を目指すグローバル半導体企業にとって魅力的な投資先となっています。

 

政府の支援:インド半導体ミッション

2022年に発足したインド半導体ミッション(ISM) は、設計・製造・イノベーションの分野でインドをグローバル拠点とすることを目指しています。政府は同ミッションの支援のために、1.4兆円(約106億米ドル) を拠出しており、国内外のプレイヤーを対象とした補助金やインセンティブが含まれています。

 

ミッションの主な内容は以下の通りです:

l  製造インフラの整備:ファブ施設やOSAT施設の構築。

l  研究開発(R&D)能力の強化:次世代半導体技術の開発促進。

l  スキル開発プログラム:半導体分野の労働力を育成・拡大。

l  さらに、同ミッションの第2段階の資金支援が検討されており、開発加速が期待されています。

 

戦略目標:国内外の需要に対応

インドの半導体戦略は、急成長中の国内電子機器および自動車セクターへの対応を主軸としています。同時に、世界市場への供給を目指し、グローバルなサプライチェーン多様化戦略に貢献することも視野に入れています。

 

この記事を書いた人

西山謝志

西山謝志

有限会社マーケット・リサーチ社 代表/インド市場調査コンサルタント
元エクソン社および伊モンテディソン社にて東南アジア地域統括を歴任後、証券会社での産業アナリスト職を経て、1997年にマーケット・リサーチ社を設立。インド市場に特化した調査・進出支援の第一人者として、20年以上にわたり100社以上の日本企業の現地進出をサポートしてきた実績を持つ。特に、自動車、エネルギー、食品、医療、機械、ITなど幅広い業種において、市場調査・販路構築・提携交渉などの実務支援を行っている。