2025年5月、インドとイギリスは歴史的な自由貿易協定(FTA)に正式合意し、両国の経済関係は新たなフェーズへと突入しました。
保護主義が高まる中、このFTAは主要経済国間においてトランプ関税以降初となる本格的な貿易協定であり、国際的にも大きな注目を集めています。今後、貿易額は2030年までに倍増し、2040年には年間255億ポンド(約3兆4,000億円)規模に達することが期待されています。
本記事では、このFTAがインドとイギリスそれぞれにもたらす具体的なメリットと、今後の展望についてわかりやすく整理します。
インドにとっての主なメリット
輸出拡大と関税ゼロの恩恵
今回のFTAにより、インドの輸出品の99%が英国市場で関税ゼロとなります。特に繊維、宝飾品、医薬品、ITサービスなどの分野が恩恵を受け、製造業とサービス産業の輸出競争力が一段と高まる見込みです。
専門人材の移動促進
IT、医療、金融といった分野で活躍するインド人専門職にとって、ビザ手続きの簡素化や3年間の国民保険料免除などの措置が導入され、英国での就業機会が広がります。これは海外送金の増加や所得向上を通じてインド経済にも好影響を及ぼします。
農業分野の保護維持
農業においては、乳製品や果物(リンゴなど)に対する関税が維持されており、国内農業への影響を最小限に抑える形でバランスが取られた協定となっています。
イギリスにとっての主なメリット
関税削減で輸出促進
英国の主要輸出品であるウイスキーやジンの関税は、今後10年以内に150%から40%へ大幅に引き下げられます。加えて、化粧品、医療機器、先端機械などの関税も削減されるため、インド市場での競争力が高まると見られます。
公共調達市場へのアクセス拡大
FTAにより、イギリス企業はインドの公共調達分野(交通、医療、エネルギー)への入札参加が可能となり、ビジネス機会が一層広がります。
中小企業(SMEs)のインド進出支援
協定では手続きの簡素化やコスト削減が盛り込まれており、中小企業によるインド市場への参入が容易になる環境が整備されました。
今後の展望と国際的意義
インド・イギリスFTAは、単なる経済協定にとどまらず、脱グローバル化の流れにおいて自由貿易の重要性を再確認させる国際的モデルとなる可能性があります。
インドにとっては、さらなるグローバル市場との一体化を進める足がかりとなり、イギリスにとっては、ブレグジット後の通商戦略における象徴的成功例として位置づけられています。
結論
今回のFTA締結は、インドとイギリス双方にとって極めて戦略的な意味を持ちます。輸出機会の拡大、専門人材の移動、公共調達の解放など、経済の多分野において直接的な効果が見込まれます。
同時に、FTAは今後の国際貿易の枠組み形成における先進的な事例となり得るものです。アジアと欧州の橋渡し役として、インドとイギリスがどのように連携を深めていくのか、引き続き注目されます。
FTAの動きをビジネスチャンスに変えるために
インド・イギリス間のFTA締結により、さまざまな分野でビジネス機会が拡大していますが、それを自社の成長戦略にどのように取り込むかは、業種や体制によって大きく異なります。
有限会社マーケットリサーチ社では、日系企業の皆さまに向けて、次のようなサポートを行っております。
- インド・イギリスFTAを踏まえた市場機会の分析
- 業種別の輸出入可能性や法制度の影響調査
- 公共調達市場参入に向けた情報収集・現地パートナー探索
- 専門人材活用・現地法人設立などの実行支援
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