AIツールだけでは危険?インド市場進出に不可欠な現地調査の重要性

近年、ChatGPTやGoogle GeminiなどのAIツールを活用したマーケティング調査が広がり、日本企業の海外進出でもAIによる情報収集が一般化しつつあります。確かにAIはスピーディーに膨大なデータを整理してくれる便利なツールですが、それだけに頼って本当に海外市場を攻略できるのでしょうか?特に、多様で急速に変化するインド市場では、「AIだけでは見落としてしまう現地のリアルな情報」がビジネスの明暗を分けることも少なくありません。

この記事では、AIリサーチの限界とフィールドリサーチの重要性について、事例を交えて解説します。


AIリサーチの活用は出発点にすぎない

ChatGPTやGeminiなどのAIツールは、インドの市場規模、政策、競合状況などの定量情報を効率的に取得するには有効です。マーケティング戦略を検討する際の仮説構築に役立つ一方で、その情報が実際の現地事情と合致しているとは限りません。AIは「表面的なデータ整理」には優れていても、「現場感」や「商習慣」、「顧客の意思決定プロセス」といった定性的な要素を掴むことは苦手です。


AIリサーチの落とし穴と現地との乖離

ある日系企業がAIから得た市場情報を元に広告戦略を立案しましたが、いざ現地で展開しようとした際、現地スタッフから「現実と合っていない」と強く指摘されました。調査情報と現場感覚のズレが浮き彫りとなったのです。実際に調査してみると、購買の決定要因が価格ではなく「人間関係」や「取引の継続性」にあるなど、AIでは捉えられない実態が明らかになりました。


インド市場でよくあるAIの情報誤認ポイント

  1. 過去情報への依存:急成長するインドでは、3か月前の情報すら古くなることもあります
  2. 検索トレンドの誤解:話題性はあっても実際の購買行動に結びつかないケースが多々あります
  3. 非デジタル文化の存在:地方都市では商談や価格決定が対面・非公式で行われていることも
  4. 商習慣の違い:ディストリビューター選定や契約条件など、ローカルルールはAIでは把握困難

フィールドリサーチで得られる一次情報の価値

現地調査では、次のような深いインサイトが得られます:

  • 小売業者や代理店の声を通じた流通網の実態把握
  • 顧客が「どんな価値観で選ぶのか」といった定性調査
  • 政策運用の実態や行政との関係構築のヒント
  • 現地の“キーパーソン”とのネットワーク形成のきっかけ

AI × 現地調査 × 専門家の三位一体が成功の鍵

理想的なのは、AIによる仮説構築、現地での検証、そして専門家による実行戦略の組み立てです。AIを「便利な道具」として活用しつつ、現地の生の声と第三者の客観的視点を組み合わせることで、より高精度かつ成功確度の高い戦略が描けます。


結論:AIはあくまで補助。鍵を握るのは“現地の声”

AIは便利なツールですが、あくまで補助的な存在です。特にインド市場のように変化が激しく、地域ごとに商習慣が異なる市場では、現地調査の重要性はますます高まっています。成功する企業は、AIの活用だけでなく、現場のリアルな声をしっかりと汲み取り、それをもとに戦略を柔軟に調整しています。


インド市場に関するご相談はマーケット・リサーチ社へ

有限会社マーケット・リサーチ社では、AIを活用した仮説構築に加えて、現地でのフィールドリサーチや専門的な実行支援まで一気通貫でご提供しています。貴社の海外戦略をより確実なものにするために、ぜひ一度ご相談ください。

この記事を書いた人

西山謝志

西山謝志

有限会社マーケット・リサーチ社 代表/インド市場調査コンサルタント
元エクソン社および伊モンテディソン社にて東南アジア地域統括を歴任後、証券会社での産業アナリスト職を経て、1997年にマーケット・リサーチ社を設立。インド市場に特化した調査・進出支援の第一人者として、20年以上にわたり100社以上の日本企業の現地進出をサポートしてきた実績を持つ。特に、自動車、エネルギー、食品、医療、機械、ITなど幅広い業種において、市場調査・販路構築・提携交渉などの実務支援を行っている。